純粋な意味でのリフォームとはちょっと違うが、設備の一部としての水の供給。
我が家で違うのは、水の供給システムが家の中のシステムだけでなく、はるか水源から家の軒先までのシステムも、自分で管理しなければならないこと。
毎月の水道局の請求はない代わりに、数々の肉体労働での対価が求められる水の供給。
なぜなら我が家の水は井戸でもなく、水道水でもなく、なんともロマンあふれるイノシシのうじゃうじゃいる対岸の山の上から引いてきているから。
おそらくその総距離1Km程度。
前のオーナーが山の中に塩ビ管を敷設し、我が海の家の軒先まで自然の水を調達してくれる。
上流に民家など全くなく、自然のままの水なのだが、多少茶色がかっており、水質検査は行っていないが、その水を飲むことは避けている。
ただ、生活用水として使用するのは全く問題なく、また、茶色がかってはいるのだが、泥の嫌な臭いはせず、逆に大地の滋養を含んでいるような栄養たっぷりの水のように見える。
さて、この山水を運んでくる水道、夏を迎え、このところ、この水の出が悪い。
タンクを調べると、水洗トイレの原理と同様で、水がへると自然に補給されるはずなのだが、そもそも山からの水の供給がストップしてしまったので、タンク内の水も減る一方で、まったく供給されていないことが分かった。
このような状況下、今般、我が家の設備面をすべて見ていただいた親方に同行いただき、このシステムすべての説明とメンテの方法を教えていただくこととなった。
待ち合わせは、朝の9時。
時間ぴったりに玄関から親方の声。
私は袖なし、短パンで待っていたのだが、山の中の作業に適さないということで、長そでを着ることを勧められる。
下は、渓流釣りのばか長(腿の付け根まで届く長靴)を持っていたので、問題なかったのだが、上は夏なので、持っていない。
必死で家の中を探すも結局なく、車の中を探すと、仕事でつかった白のYシャツが一枚。
この際選んではいられないということで、Yシャツを着て、少しでもそのYシャツ感を消すために上からTシャツを着て、親方から借りた手ぬぐいを首に巻き、下はばか長をはき、完全防備とした。
話題の清涼感を作り出すYシャツではなく、普通のYシャツであったので、暑くてたまらないが、親方の手前、弱音ははけない。
水源までの道は簡単に言うと
家 →下る→ 川 →上る→ 入山 →上る→ 家より高い水源の湧水のでる小川
家から少し下り、川を渡り、対岸の山を登っていき、その上部の水源まで、ホースをたどる道程となる。
家のそばからチェックしていく。
まずは家を出発し、川に向かって下っていく。
この道すがら、第一の蛇口があり、この水道をひねる。
この水道からはかなりよごれた泥水が出ていて、時々エアが入っており、とぎれとぎれに水がでてくる。
次にさらに下り、川を渡り、笹の茂みをかき分け、道なき道を上っていく。
道が全くない中、過去の記憶で、迷いなく登っていく親方はとてつもなくかっこいい。
親方は藪の中に第二の蛇口を難なく発見。
この蛇口をひねるとやはりエアを含んだ泥水が大量に噴出してきた。
次にずんずんずんずん上って水源を目指す。
かなりの距離、急斜面をのぼっていく。
親方が作ってくれた水を摂取する水源は二つ、一つは小川の流れでせき止めたところ、もう一つは、岩の下から自然にでてくる湧水のようなところ。
まずは、この一つ目の小川の流れでせき止めたところ。
その中にホースが埋まっており、せき止めたところが泥が溜まってホースの入り口をふさいでしまっている。
このせき止めたところをどんどんどんどん掘って、やっとのことで、ホースの先端を見つける。
ホースの先端がしっかりと水の中に浮くように下の泥をかき出してやる。
この作業中、沢蟹がでるわでるわ、小さいのから大きいのまで、沢蟹祭りのように大量の沢蟹が湧き出ている。
この沢蟹は素揚げで食べるとおいしいらしいが、今般は、あくまで、水の確保ということで、沢蟹とりはお預けとした。
石と泥で、道具は使えないため、手作業でかなりの重労働を行い、やっとのことで、一つ目の水源の掃除がおわった。
この水源の上には竹や木などを置いてやる。
こうすることでイノシシの通り道となることを避けることができるらしい。
次にもう一つの水源、岩の下の湧水が出るところ。
ここも泥で埋まっており、手で掘り進んでいき、最終的にホースにたどり着く。
ここは、岩の下からじかに水がわきでているところで、泥をとってやると岩の下からきれいなすんだ水が湧き出てくる。
本当にきれいで、これは親方によると完ぺきな湧水なので、飲めるという。
尚、ここも沢蟹祭り。
沢蟹が湧いて出るほどいる。
子供たちに見せてやりたいがこの急斜面はなんともつらく、次回は取ってきて見せてやろうと思う。
ここで、水源の掃除が終わり、次の作業に入る。
水源から第二の水道に行くまでに二つのタンクがある。
この二つのタンクのどちらかに泥が溜まって汚れているのではないかとのことで、まずは一つ目のタンクへ。
本当に親方はなんでこんな似たような景色の中を簡単に目印もなく蛇口やタンクを掘り当ててしまうのか尊敬の眼でしか見れない。
いずれにせよ、第一のタンクに到着。
第一のタンクが何かというと、ステンレスの浴槽であった。その上をステンレスの板で覆っているのだが、このステンレスの板がずれており、この板の上及びステンレスの浴槽の中に泥が山盛り。
周りにはたくさんの穴が。
これは、ミミズを探すイノシシが当たりかまわず掘りまくった結果であり、まずは、このステンレスの浴槽をきれいにした後にイノシシの通り道を変えてやる作業が必要になるという。
指示の通り動く。
まずは、ステンレスの蓋の上に山と盛られた泥をとりのぞき、浴槽の周りの泥を同じく取り除いてやる。
その後、水が入るのをとめ、浴槽の水をすべて抜き、浴槽内部の掃除。
それが終わり浴槽にふたをし、大きな石をそのステンレスのふたの上にのせ、しっかりと閉じる。
次にイノシシの獣道の変更。
そこら中に生えている竹を120Cmほどに40本ほど切り、それをイノシシが土を掘っていた側の浴槽のふちについたて状に打ち込んでいく、これで、イノシシは近寄らないという。
さらに、この給水システムに影響を与えない場所を選び、イノシシが通りやすそうな道もご丁寧に作ってあげる、これで、飴と鞭を与え、イノシシを遠ざける作戦。
本当に親方は何でも知っている。
次にまた下っていくと、コンクリで作られた円柱形のタンクがある、おそらく200Lのドラム缶と同じような大きさであると思われる。
ここは満タンであるのだが、このタンクにつながっているホースから水がしっかりとでておらず、非常に心細い流れ。
この水の給水システムは、簡単に言うと高低差を利用した圧力で水を供給するもので、このタンクにつながるホースの向きがちょっと上向きになってしまっている、このため、水の流れが心細くなってしまっているのであった。
ここで親方は、袋から充電式のハンマードリルを取り出し、このコンクリの真ん中あたりに穴をあける。
穴が開くと、そこから、勢いよく水が流れ出る。
この穴は先にホースがつながっていた場所より低くなるため、かなりの勢いで水が噴射することとなる。
これで、水の勢いも増し、泥の掃除も行い、すべてが完了。
しめて、三時間程度であったが、本当に足腰もたたないほど疲れ切ってしまい、帰り道は本当につらかった。
帰り道に二つ目の蛇口をひねってと言われたのだが、まったく場所がわからない。
何度か通ってしっかりと場所を把握しなければ自分でメンテでいない半人前の人間となってしまうので、次回からは毎週取り急ぎ見回りだけでもして、場所をしっかりと頭に叩き込む必要がありそう、水脈パトロールである。
いずれせよ、すべてのシステムの点検が終わり、家にもどり、元蛇口をひねってみると勢いよく水がわき出してくる。
しばらくこの水を流しっぱなしにして、ホースの中に詰まった泥を少しでもきれいにする必要があるとのことで、この日は水を使い放題である。
午後から家の片付けに入ったのだが、ある程度流した水の量がわかるように浴槽に水をためていく。
一杯までためてから、完全に抜いてというのを繰り返す。
回を繰り返すごとに濁りが薄くなっていくことがうれしかった。
一方で、いくら使い放題といってもどうしてもせっかくたまった水がもったいなくなってしまう。
この日はもう9月にも関わらず真夏日。
古い家はクーラーもなく、網戸もないため、蚊が入ってこないように窓をしめているため、とにかく激熱。
浴槽に水がたまるごとに水風呂につかり、合計4回。
今回は何としても水の安定供給という目的を達成したかった。
水がしっかり出ないとトイレの問題もあり、また、公衆浴場には行きたくない奥さんの性格で、しっかりシャワーが使えないと子供たちとも一緒に休みを過ごすことができないので、なんとしても今回でかたをつけ、三連休が連続する9月の週末は家族で過ごしたかった。
目的を達成した充実感と水風呂のとてつもなく気持ちのいい9月の残暑の週末。
親方、どうもありがとうございます、これで、きちんと家族と一緒に時間をすごすことができます。
次回より一人の水脈パトロールがんばります!!!
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