コロンビアの地酒の話

南米コロンビア

ワイン産地は世界中に広がっている、歴史と伝統と品質とテーストから、フランス、イタリア、スペイン、ただ、近年の新興勢力である南アフリカや、チリ、アルゼンチン、日本の甲州や余市など、これらのワインも至極至高の味を醸し出しながら、本家本元の欧州ワインと日々切磋琢磨している。

言語でいうと世界標準は英語と言って問題ないと思われ、一方、おそらくアルコールの世界では、ワインが世界標準となっているような感じ、ビールかもしれないが。

そんな中、私が暮らすことになったコロンビアにはワイン文化は根付いていない、もちろん超裕福層の世界では、夜な夜な怪しげな会合でワインの良しあしについて語られているのであろうが、コロンビアに渡っても庶民の身分に変化のない私にはさらに遠のいたワインの話。

もちろんブドウという果物を様々な英知を結集して現在のワインというアルコールまでに昇華させた技術力、ブランド創出能力、マーケティング力には脱帽で、先人の努力への尊敬は計り知れなくワインは人類の財産であるといえるであろう。

私もワインには興味があり、世界中で試飲の経験はあるが、一つ思い出を挙げるとすれば、パリでの思い出である。

パリにあるワインが豊富で、日本食とのマッチングで、人気を博しているレストランに知り合いのつてを頼りに訪問したことがあった、オーナーでソムリエは日本人(「くだんの日本人」と呼ぶことにする)。

レストランに入ると同時に、様々な日本食がとても小さい小鉢に入れられ、ひとつづつ運ばれてくる、それに合わせたワインを進めてくれるのだ。

とても新鮮な体験、料理に合うアルコールではなく、まず、つまみを用意し、そのつまみを最大限味合わせるためのワインを用意するという逆転の発想、これはかなり興奮させる。。。

ただ、実際は、というと。。。。。

料理的には大したレベルではなく、くだんの日本人による様々なうんちくを聞きながら小鉢とワイン体に入れていく。

ある小鉢をサーブした後、くだんの日本人は「これに合うワインはない、よって、日本酒をサーブします」と。

ワインのデカンタに入れ、日本酒をワインと同様に空気と混ぜながら、香りを楽しんでおり、私に注ぎながら、くだんの日本人は「日本酒はおいしいし香りもよいのですが、日本人は香りを楽しむ文化がないのでわかってくれるかどうか」。。。。とのたまっている。

私、日本人、「日本人は、香りを楽しむ文化を持っているのも知らないの?」と思いながら、ワインデカンタで、空気と混ぜた日本酒の香りをかぐ、いつもの通り芳醇な香り。

「日本人はかわいそうです、味は楽しむけど香りを楽しむ文化がなくて。。。。」この日本人、ある意味すげーーーと思った。

と、この時、このレストランのおそらく常連客であろうフランス人のムッシュがドアを開けると、このくだんの日本人は満面の笑みと、俺はフランス人と言わんばかりのフランス語での大げさな歓迎のご挨拶、お二人で表面的な会話を交わしていらっしゃる。

この会話を意味は分からないが小耳にはさみながら、私はドン引き、「どうぞご勝手に楽しまれてください、あなたの不幸は香りを楽しむ文化のない日本に生まれたことですね、あーあ、フランスに生まれてれば、愛してやまないフランス人になれたのにー--、かわいそうな人」と心の中で思いながらも、余裕の対応をしていたのだが、最後、私の堪忍袋の緒を切る発言が。。。

一般の庶民のサラリーマンである私と、華の都大パリスでレストランを経営し、日本食とワインの融合を目指して、フランス人に生まれたかったくだんの日本人が私の堪忍袋の緒を切った言葉は、あるワインの味に関する表現。

ある赤ワインを注がれ「どうですか」と問われ、極渋重厚が好きな私は、その通りのワインが来て、自分の舌には自信がないのですが、もういいやと思い、「本当に極渋重厚でおいしいです」といったところ、くだんの日本人は、「このワインの味は、ハトの子供が2Kmを飛びきって、そこでちょっとわきの下に汗をかき、その翼を止まった後に、ふっと一回ふるったときに出てきた空気の香りがしますね」と。

確かにポエムである、この言い回しは、ただ、それまでに数々の同族である日本人に対する差別やいわれのない言葉を浴びながらの、鳩の子供の汗発言、ここで私は自分の理性と外界との交信を断つために、ただひたすらアルコールをあおることにした。

アルコールをあおり切り、鳩の汗の香り発言に再度悶絶し、耐えられなくなり暴力をふるう前に自主退場、フランスでどのようなマジックを使ったか不明だが薄い記憶の中でも無事にホテルに帰還。

話はだいぶそれてしまった、、、私にとってはあまりに衝撃的な出来事だったから。

くだんの日本人の話は忘れて、メジャーリーグであるワインから話をそらし、マイナーリーグといえども国を背負った重責をになう各国を代表する地酒の話をしたいと思う。

筆頭、日本の日本酒、これ、数々の世界中のお客を日本で迎えている私は、パーセンテージを説明し、蒸留酒ではないからと説明してもノックダウンされる方が多いという事実、コメからできているといっても発酵技術に裏打ちされたコメではなくフルーツの香りというありがたい評価。そのほかにも様々な種類の焼酎など日本は地酒の宝庫といっても過言ではないと思う。

そのような中で、南米では、メジャーリーグであるアルゼンチンやチリで作られるワイン、だけではない、サボテンから作られる世界的に有名な地酒、メキシコのテキーラ、サトウキビから作られるブラジルのピンガ、ブドウから作られるペルーのピスコなど世界レベルで誇れるアルコールは無尽蔵に存在する、だって、ラテンは気持ちいいこと好きだから。

そのなかで困った、コロンビア、メキシコのようなサボテンはないからテキーラは無理、ワインといえばブドウはできるし、製法はまねてみたけど全く別物。。。。。このような中、私がコロンビアの世界に誇れる国民酒であると信じてやまないのはアグアリディエンテ、この酒を飲んだ量では、日本人では私が一番であると自負があり、その名誉は何としても自分のものとしておきたい。

このアグアリディエンテの意味は、熱い水、温度が熱いわけではなく、アルコールが熱い、本当に熱い。

もともとサトウキビから作られた蒸留酒であり、そこにアニスで風味を加えているのが特徴。

見かけは無色透明でぱっとみは本当に水のようである。

各地方にそれぞれ独自のアグアリディエンテがあり、それぞれ独自のブランドで販売している。

飲み方は小さなグラスで一気飲み。

その後テキーラのようにレモンをなめることもあるが、ある意味、どこの国でも共通で、酒は男のたしなみ。

これにレモン汁を入れようもんなら、マッチョでないと意味のない扱いを受け、とにかく苦しいが、一気に飲み干し、誇らしげに空の杯を、周りに見せ付ける。

ただ、不思議なことに、国家的音楽であるサルサをバックに一杯二杯と杯を重ねて飲み干すと苦しみが快感に昇華し、なんとも夢見心地。

アグアリディエンテの種類は多々あるが、有名なのが、ネクタール。

これは、緑、青、赤とあり、この順にアルコール度が高くなり、また、香りもきつくなっていく。

ちなみに緑は24%、青、赤は28%。特に赤は香りも強く、アルコールという麻酔が効いていない状態でショットを決めると、自然とうっと吐き気を催す。

ただ、ここは我慢のしどころで、二杯も飲むとしっかりと麻酔が効いてきて、のど越しさわやかな飲み物へと変化するので不思議なものである。

そして別ブランドで有名なのがアンティオケーニャ。

アンテイオキアという地域から全国区にまで成長したブランドだが、本酒の評価は分かれるところ。

人によれば、非常にこくがあり、いい香り、ただ、私からすれば、とにかく香りが強く、よくのめるなという感じ。

個人的には私はこのお酒は好きだが、やはりお酒というのは、その土地がもたらす空気、雰囲気など全てがあいまって、よい味というのを作り出していると実感する。

というのは一度機会があり、日本にアグアリディエンテをもってかえり、飲んだが、なんともまずくてまずくてとても一生で限られたキャパシティの私の大切な肝臓を使う気にはならない。

このお酒をたしなむ上での条件は、ちょっと肌寒い状態で、さらに高度は2600M以上というのが必須であると思われる。ボゴタは標高2600Mに位置するが、酸素量も平地と比較すると少ない。

よって、ちょっとした酸欠状態で本酒をたしなむことで、味を最大限感じることができ、また、酔いも適度なスピードに調整される。

サルサとちょっとの酸素と人々の陽気な笑顔、とにかく昇天すること間違いなし。

外で飲む機会があれば、自分も満面の笑顔でいかにもおいしそうにこのアルコールを飲むことにより、自然にコロンビア社会には溶け込めたと心底錯覚させてくれる非常に有用なアイテムである。

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