現在行っている海の家での生活で最も苦労をしているのは水の確保だ。
過去、沢から水を引く自分にとっては一大灌漑工事の話はしたが、山の水は常に気まぐれである。
今般は、山からの水がまったく供給されなくなって、貯水タンクの水が全くたまらなくなってしまった、おそらく沢から水を引くホースがまた、イノシシか何かの攻撃にあい、ずれてしまい水を供給しなくなったのではと思い、年末ながら入山することとした。
今般は私の母親が海の家の訪問に付き合ってくれていたので子供たちの面倒を見てもらい、奥さんと入山することとした。
よって、今般は時間制限がある。
タタは通常の食事に加え、現在も母乳を飲んでいる。
その間隔が昼間は約2時間。
よって、2時間が勝負である。
身支度を整え、二人の子供を残し、山へ。
奥さんはこの3年間、このように子供たちと2時間も離れることはなかった(逆に言うと私がしっかりとそのような時間を作ってあげていなかった)ため、子供なしで歩いていると何となく変な感じという母親の見本のような感想を述べながらの外出。
ごめんなさい。
いずれにせよ、冬なのだが、温かく秋晴れのような気持ちの良い青空の元、第一の蛇口に向かう。
第一の蛇口をひねると水が勢いよく噴き出してくる。
ただ、ちょっとすると水の勢いが弱まってくる。
このまま待っているとおそらく止まってしまうのではないかと思いつつも、そこまで時間もないので、そのままにして、川を渡る。
川を渡ると、第二の蛇口が。
ここで蛇口をひねると水が出てこない、待っても待ってもでてこない。
やっぱり、沢に引き込んであるホースが外れたなと思い、沢伝いに山を登っていく。
しばらく登ると、石の筒が出てくる、ここが空になっていれば、沢に引いたホースが自ら抜けてしまい、水が供給されないだけで、単純な作業で復旧できる。
ただ、どうも、様子が違う、石の筒に近づくにつれ、水が注がれる音がしている、筒の蓋を開けてみると水が勢いよく流れ込んでいる。
おかしい、この石の筒は正常。。。
また、登っていき、風呂桶を見る、風呂桶にも水が勢いよく注がれている。
おかしい、この風呂桶も正常。。。
そこから少し登り、沢に行ってみるとホースは全く荒らされておらず、沢で水をしっかりと吸引している。
こうなると問題は厄介である。
問題は、石の筒から第二の蛇口のどこかで塩ビ管が割れて水がもれてしまっていることになる。
これは素人ではおそらく不可能な工事となる。
いずれにせよ、水源近くのシステムが問題ないことを確かめた我々は、再度第二の蛇口に戻り、蛇口を再度開いてみる、やはり何にも出てこない。
水源、問題なし、風呂桶問題なし、石の筒問題なしとのことで、消去法で石の筒から第二の水道までの間で水が漏れてしまっていることになる。
絶望である。
絶望で暗くなっていたのだが、蛇口の先っぽに手をかざしてみると空気の流れを感じる、蛇口の奥の地中深く埋められた塩ビ管の中で何らかの動きがあるのは確かなようである。
水道の先っぽに耳を近づけてみると、はるか奥のほうから水が流れている音がする。
鷹の視覚、サメの嗅覚、オオカミの聴覚をほこる奥さんにもオオカミ力を発揮してもらい、蛇口の先に耳を近づけてもらい聞いてもらうが、絶対に水は流れているというお墨付きをいただいた。
何らかの理由で第二の蛇口に水が上がってこないだけで水は流れているのである。
それであるならば問題は、第二の蛇口と第一の蛇口の間、または、第一の蛇口から家への給水の間という二つの可能性となる。
この二つの可能性のどちらが問題かはっきりさせるためには、第一の水道を開放し、水が出続けるかを確認する必要がある。
我々は第一の水道に戻り、蛇口をひねり、水道を開放する。
水はでる、このままにして、その場を離れ、子供たちのもとに戻る。
家に戻ると子供たちは、我々を出迎え、狂喜乱舞で、これほどうれしい歓迎はない、一方、母親に聞くと二人ともいうことをよく聞きいい子であったと。
次の日に第一の蛇口に水の出を見に行くと、水が出続けている、ここではっきりしたのは、第一の蛇口と家の貯水タンクの間がうまくつながっていないということになる。
第一の水道と家の距離は、直線距離で約50M、おそらく地中に埋没されているパイプは、直線では通っていないので80Mといったところか、これをすべて掘り出していくのは大変な作業である。
一方、今般の入植は長い年末年始休みということで、長期にわたる、この期間中の水をまずはなんらかの方法で確保しなければ。。。
一番原始的な方法は、第一の蛇口まで水を汲みに行き、何度も往復する。
ただ、この第一の蛇口へ行くには、かなり大回りしなければたどり着けず、おそらく片道300M、足場も悪いので、5分はかかる。
一度に20Lのタンクを運ぶとして、200Lの水を確保するのに、10往復、おそらく2時間くらいかかってしまう。
アフリカのどこかの国のような話である。
他の方法としては、家と第一の蛇口を直線で結ぶ土地の草を刈り、直線の道をつくって、第一の蛇口から家の前の斜面の下までホースで水を引き、そこで、水をタンクにため、タンクを担ぎ、斜面を駆け上がり、水を貯水タンクに直接注ぎ込むという方法が考えられた。
斯様な選択肢の中、まずは、ホースの値段によるということで、コメリにホースの値段を見に行った。
普通のホースで50Mとなるとかなり高額となってしまうのだが、農業用のホースを見ると50Mで1500円程度、これであれば買えるなということで、第二の方法にて対応することとした。
翌朝、日の出とともに起き出す、といっても冬なので、7時頃。
近隣の人もいるので、8時までは待とうと思い、8時より草刈り開始。
私の持っている50CCのエンジン草刈り機はかなり危ない、日本製でない。
タンクの上の部分から漏電しており、触れるたびにビリっと結構な電流が身体に流れる。
どうしてそのようになってしまったのかと思うのだが、仕方がなく、その放電箇所にふれないようにしながら、草刈り機をふるうため、変なところに力が入り、かなりつかれる。
ただ、気合でがんばり、2時間程度で、最終的に幅1M長さ50Mの道を開墾した、冬なのに汗びっしょりである。
また、蛇口のある場所は、笹や低木に覆われているため、この辺はなたで切り倒し、蛇口から私の開拓地までの一直線の道が出来上がった。
はっきり言って、かなり爽快である、モーゼの十戒ではないが、今まで全く足を踏み入れることができなかった場所に道が出来上がっていた。
次の作業は、買ってきたホースを蛇口につなげ、針金で固定する。
針金で固定した後は、ホースを担いで蛇口から我が開拓地までホースのねじれをとりながら進んでいく。
最終的にホースは残念ながら斜面の上までは届かず、きっちりと開拓地斜面の下までやってきた。
最後に感動の貫通式である、蛇口の場所に戻り、蛇口をひねる。
水が出続けることを祈りながら、斜面の下についたときに水が出ているのを見たいがために、ゆっくりと歩いて、開拓地斜面下の、ホースの出口に到着。
出てる、水が出てる、感動、これにより、2時間10往復の水の運搬から解放されたのである。
私はすぐに20Lのタンクにホースをいれ、水がたまるごとに水をもって斜面を駆け上がること25回、家のわきにおいたローリータンクを満たすことができた。
家のわきに置いたローリータンクが400Lなのに、なぜ、25回、合計500L の水を供給しなければならなかったかというと、私が必死に水くみしているところでも全くありがたみを感じることなく平気で水を使い続ける母親と奥さんがいたからである。。。
この斜面、高低差5M、かなりの急斜面、この往復だけでも疲れ切ってしまい、最初の大回りをしながらの水の供給がいかに困難であったか、おそらく不可能であったように思われる、急がば回れで、草刈りやホース引きなど時間はかかったが、それでも、有り余る成果に気分の良い一日となった。
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